真栄4条1丁目の土砂災害警戒区域指定 真栄第四町内会が反発 道と札幌市の住民説明会がまたも紛糾

 札幌市清田区真栄4条1丁目の急傾斜地を道と札幌市が土砂災害警戒区域に指定しようとしている問題で、道と札幌市は2月18日(日)、地元の真栄第四町内会(吉田和久会長)に対して同町内会館で説明会を開催しました。

土砂災害警戒区域の指定に関する道と札幌市の説明会=2024年2月18日、真栄第四町内会館

 しかし、道と札幌市の説明に納得しない住民側が反発、説明会は紛糾し、町内会は「このままでは警戒区域の指定に同意できない」と伝えました。

左側が当該崖地(市有地)。警戒区域の指定範囲は右側の住宅に及ぶ=真栄4条1丁目

 問題の急傾斜地は真栄4条1丁目の札幌市が所有・管理する樹林地(清田真栄特別緑地保全地区)。もともとは厚別川(あしりべつ川)の河岸段丘で、崖高18~23m、勾配40~45°の急傾斜の緑地が長さ350mに渡って続き、崖下は生活道路を挟んで真栄第四町内会の住宅が建ち並んでいます。

 近年、大雨などによる土砂災害が頻発していることから、国は2001年施行の土砂災害防止法に基づき、「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)と、さらに危険度が高いとされる「土砂災害特別警戒区域」(レッドゾーン)の指定を全国的に進めています。指定の狙いは住民への注意喚起だということです。

左側の当該がけ地は札幌市が所有管理する土地

 真栄4条1丁目地区でも、道と札幌市は、ここの急傾斜地と崖下の住宅地を警戒区域と特別警戒区域に指定しようとしていますが、地元住民と町内会の同意が得られず、指定に至っていません。

 この地区は道によると、住宅7戸がレッドゾーン、住宅40戸がイエローゾーンにかかるといいます。

 この問題が表面化したのは2018年9月30日、道と札幌市が清田区民センターで開催した清田区内における土砂災害警戒区域指定の説明会の場でした。「指定はするけど、防災工事(ハード対策)は行わない」という説明に、住民側から疑問や反発が噴出しました。

 とりわけ真栄4条1丁目の急傾斜地は全部が市有地なので、住民の反発が強くありました。「その土地は市有地なのだから、危険というなら、危険を除去するハード工事をまず市が責任をもって行うのが当たり前ではないか」というわけです。

札幌市側(左)へ1回目の要望書を提出した真栄第四町内会役員ら(右側)。宮村素子市議(当時)同席=2018年10月25日、札幌市役所

 その後、「指定はするがハード工事はやらない」という道と市に対して、真栄第四町内会は2018年10月と2022年3月の2回、要望書を提出しています。内容は概ね次の通りです。

札幌市側(左)に2回目の要望書を提出する真栄第四町内会(右側)。宮下准一道議、北村光一郎市議同席=2022年3月30日、札幌市役所

1 高低差と勾配だけで機械的に指定するのではなく、地質調査をしてほしい。

2 市有地なのだから速やかに必要なハード対策工事を講じてほしい。

3 当該傾斜地は特別緑地保全地区に指定されていることから、工事は緑を保全しながら崖地を補強するノンフレーム工法(崖面をコンクリートで覆うのではなく、樹木を1本も切らず緑を保全したまま崖面を強化する工法)を採用してほしい。

4 レッドゾーンに指定される予定の宅地に係る斜面の区域から始めるなど危険度に応じて順次実施してほしい。

5 ハード対策工事について札幌市との間で具体的な確約が取れるまでの間は、土砂災害区域の指定をしないでほしい。

6 道と札幌市は、今後も当町内会と定期的に協議の場を持つようにしてほしい。

 これまで、道と札幌市は何回か真栄第四町内会と説明会や協議の場を持ち、現地調査や簡易な地質調査も実施してきました。これらの動きを踏まえて行われたのが2月18日の説明会でした。

説明会に出席した道と札幌市の担当者=2024年2月18日

 道は空知総合振興局札幌建設管理部、札幌市は都市局市街地整備部、建設局緑の推進部の各担当者計8人が出席しました。清田まちづくりセンター所長も出席しました。

 町内会側は、レッドゾーン(特別警戒区域)、イエローゾーン(警戒区域)に指定される住宅に住む住民を中心に25人ほどが出席しました。

 札幌市は「当該斜面は異常降雨等で崩壊する可能性を有している」と言いながら、「ノンフレーム工法による斜面全体の安定を図る対策までは必要ない」として、「オーバーハング部分(地盤がえぐれている状態)を除去し、植生マットを張り付けて草木を生育させて斜面を安定させる」との方針を示しました。

要するに、「ハード対策工事はやらない。植生管理で見守る」というのです。

住民、道、札幌市による合同現地確認調査=2021年11月29日

 これに対して住民側からは、「市が現地調査をしたことは評価する」との声があったものの、「ノンフレーム工法によるハード対策はやらない」との説明に、次のような反発の声が相次ぎました。

「レッドゾーンについて、私たちはハード対策の実施など特別な配慮を求めていたが、その回答・説明がまったくなかったのは問題だ」

「レッドゾーンはハード対策などにより指定解除もできる。その実績が全国で報告されている」

 これに対して札幌市の担当者は「土砂災害防止法では、レッドに指定したからハード対策をやるということにはなっていない。土のにおいの変化とか、斜面に亀裂が生じるとか、地鳴りが発生するなど土砂崩れの何らかの『兆候』があればハード工事対策をやる」と説明しました。

 これに住民はさらに反発。レッドゾーン範囲内に住む住民は「レッドだ、危険だと言われ、大雨が降るたびに不安で眠れない。兆候が出てから対策をするのでは遅い。もっと前向きに考えてほしい」と怒りを込めて訴えていました。

 「兆候じゃ遅いよ。住民のことを考えているのか。今日は期待して説明会に来たのに、何だ、これ。ふざけたこと言ってんじゃないよ」と怒る住民も。

 説明会に同席した真栄第四町内会顧問の宮下准一道議も「土砂崩れの『兆候』が見えてからでは遅い。ここに住んでいる住民の気持ちにもっと寄り添って対応してほしい。一生に一度の高い買い物ですよ。それがレッドゾーンだと。もっと前向きな回答を出してほしい。ノンフレーム工法の予算をつけてほしい」と発言しました。

 全国的には、何らかのハード工事対策を施した結果、レッドゾーンの指定が解除になっているケースもあります。住民は、そうなることを期待しています。

 住民の中には、警戒区域(イエロー)、特別警戒区域(レッド)に指定されることで、地価(資産)の下落を懸念する人もいます。現に、専門家の研究レポートで全国では地価の下落が起きていることが判明しています。

 三十数年前、札幌市が宅地開発許可を出した分譲地にマイホームを建て、30年たって、ある日突然、「お宅は特別警戒区域だ、警戒区域だ」と宣告され、しかも、危険とされる土地が市有地なのに、市は「土砂崩れの『兆候』があるまでハード対策工事はやらない」と言うのです。これでは、住民や町内会が納得いかないのは当然です。

 札幌市には、もっと住民に寄り添った行政をしてほしいものです。

 説明会の最後に、道の担当者が「指定は進めていいか」と尋ねると、吉田町内会長は「同意できない」ときっぱり返答。道の担当者は「持ち帰って札幌市と検討する」ということになりました。

 真栄第四町内会の吉田会長は「事前の私との協議で、もっと前向きの回答があると思っていました。それが全くなかった。きょう我々から出ていた意見を踏まえて至急、回答をいただきたい」と道と札幌市の担当者に伝えました。

 土砂災害区域の指定は、住民側(町内会)の同意は必要条件ではありませんが、住民、町内会の要望にはもっともな点があり、道と札幌市が指定を強引に強行するのは難しいと思われます。現に、全国的には住民の反対で指定できていないところが結構あります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です